主 な 産 婦 人 科 疾 患

子 宮 筋 腫

  • 子宮筋腫は婦人科領域の腫瘍の中では最も頻度の高い腫瘍で、性成熟期の女性の約20〜30%に認められます。 子宮筋の良性腫瘍であり子宮の腫大はありますが、それ自体は生命に危険を及ぼすことはほとんどありません。 月経血の増量や長引く月経、月経痛、さらには腫瘤の圧迫による症状を訴えて来院される方が多いようです。 筋腫があるからといってすぐに治療が行われなければならないということではありません。 症状、年齢、腫瘍の大きさや位置を総合的に考えて治療の適応や治療法が考えられるべきものです。
  • 治療法は、大まかには手術療法、および薬物療法に分けられます。 手術は筋腫だけを摘出する筋腫切除術と子宮全摘出術が基本となります。 薬物療法は根本的な治療法ではありませんが、 女性ホルモンを一時的に抑えることで筋腫を小さくして手術に臨んだり月経異常を和らげ閉経を待つこともあります。 最近では、その他の新しい治療法も行われており、 治療の適応や治療法の選択をかかりつけの先生とよくご相談されることをお勧めします。

子  宮  癌

  • 子宮癌は子宮の出入り口にできる子宮頚癌と奥の方にできる子宮体癌とに分けられます。 単に発生部位の違いだけではなく、異なった種類(組織系)の癌であり発生原因や治療法にも違いがあります。 頚癌のほうが多い(70〜80%)のですが、年々体癌の比率が増加しています。 頚癌は40代に多く、体癌はやや年齢が高く、50代の閉経後の方に好発します。
  • 頚癌の場合は初期では自覚症状に乏しく無症状です。 検診や他の婦人科疾患で受診した際に偶然発見されることも多いものです。 癌の進行に伴って異常出血や帯下(おりもの)が出現してきます。 体癌の場合は90%の方で不正出血がみられます。 特に閉経したのに突然出血があった時などには婦人科に受診しましょう。 診断には頸部および体部の細胞の検査や、必要に応じて組織検査が行われます。
  • 治療には手術、放射線療法、抗癌剤療法がありますが、基本的には手術が第一選択です。
  • 頚癌の場合、初期では子宮の出入り口だけを切除する縮小手術も行われます。 進行癌においては抗癌剤と手術、放射線の組み合わせなど個々の状態に応じた治療も行われるようになってきています。 体癌の場合も手術後の癌のひろがりによって、放射線や抗癌剤療法が追加されることもあります。 子宮癌は早期発見ができれば治りやすい癌です。 症状が出る以前の定期健診をお受けになることをお勧めいたします。

子 宮 内 膜 症

  子宮内膜症とはどのような病気でしょうか。
   経時痛、排便時痛、性交時痛、骨盤痛などの疼痛症状および不妊を主訴として近年著しく増加している疾患です。
  原因は何でしょうか。
   根本的原因は、はっきりしていませんが子宮の内側を覆っている粘膜(子宮内膜)に 類似の細胞が子宮内膜以外の所に存在し、 その病変部が子宮内膜と同じように月経の度に出血、炎症を繰り返す結果、 その部の肥厚や硬化、癒着を起こします。
その状況によって疼痛や不妊の原因ともなります。 卵巣にできた場合は卵巣内に貯留した血液が腫瘤を形成し、 その内容物の色からチョコレート嚢胞と呼ばれます。 エストロゲンという女性ホルモンによって増殖、進行し、 腫瘍的な性格も持つことから類腫瘍として扱われています。
  治療にはどのようなものがありますか。
   治療の対象は大きく疼痛、不妊症、卵巣チョコレート嚢胞の3つに分けられますが、 それぞれが重複する事も稀では有りません。
疼痛に対しては軽度なものではまずは対症療法としての鎮痛薬や漢方薬が使われます。 さらに積極的な治療のためにホルモン療法や手術療法が選択されます。 ホルモン療法には低用量ピル、黄体ホルモン療法、ダナゾール療法、 GnRHアナログ療法といわれるようなものがあります。
低用量ピルは排卵や子宮内膜の増殖を抑えることから以前より避妊の副効用として 月経量も減り月経痛の緩和が認められていましたが、 本年7月より子宮内膜症に伴う月経困難症の治療薬として一部のピルで保険適応が認められました。 また、本年1月からは新しい黄体ホルモン療法が内膜症治療の選択肢に加わりました。 子宮内膜の増殖の抑制と卵巣機能の抑制によって有効性を示すと考えられています。 さらには男性ホルモンに近い薬剤を使って子宮内膜を萎縮させるダナゾール療法や子宮内膜症が 女性ホルモンの刺激で進行することから、 逆に卵巣からの女性ホルモンにブレーキをかけるGnRHアナログ療法も行われています。 それぞれの薬剤には一長一短があり、一概にどれがいいというものではありません。 なお、手術療法は内膜症病巣の除去や内膜症によってできた癒着を剥がす保存手術と、 重症の場合で妊娠の必要がない、あるいは希望しない場合、卵巣や子宮を摘出する根治手術に分けられます。
不妊症に関しては原因不明の不妊女性の20〜50%は子宮内膜症を合併していると言われています。 近年の日本の晩婚化や高齢妊娠といった社会的状況と合わせ、疼痛のところで述べた薬物療法だけではなく、 早期より腹腔鏡下手術や体外受精などの生殖補助医療を行う機会も増えているようです。
卵巣チョコレート嚢胞では、その0.5〜1%が卵巣癌に移行する可能性が示唆されており、 年齢や大きさ、嚢胞内の画像所見を考えながら手術も視野に入れて観察していく必要があります。
最後に最も大切なことは、かかりつけの医師にご自分が何を望み、 どのような治療を希望するのかを伝え、最善の治療方法を選択していくことでしょう。

骨 盤 臓 器 脱( 下 垂 )

  • 子宮脱(下垂)、膀胱瘤、直腸瘤と言われるものが含まれます。 子宮や膀胱、直腸を支える骨盤底筋群のいわゆる『たるみ』により子宮や膀胱、 直腸が膣の壁に包まれた形で腔内に下垂したり、膣外に脱出したりするものです。
  • 自然に放置しても手の付けられない状態となり命に影響することは殆どありません。 ただ、脱出による不快感や排尿(頻尿、排尿困難、残尿感)障害、 排便障害などご自分の生活の質の低下を招くようでしたら、治療が望ましいと思われます。
  • 治療には、薬物療法、膣内リング挿入、手術があります。 薬物は漢方が主体となりますが『筋肉のたるみ』がこれによりすぐに改善することは、 なかなか困難であろうことは容易に推測できることでしょう。
  • 膣内リング挿入は、膣内に円形の弾性のあるリングを挿入することで、 膣の下降をいわゆる『せきとめる』ことになります。 手術を要しないという利点があります。 欠点としては、やはり異物の挿入ですので、違和感やおりもの(帯下)の増加がみられたりします。
  • 手術には従来法とTVM法があります。 従来法は骨盤臓器のゆるんだ支持筋肉を子宮や膀胱から剥離して、再び緊張の強化をはかり、 たるんで余剰となった膣壁も切除します。併せて膣式に子宮を摘出する方法と温存する方法があります。 TVM手術(メッシュを利用した子宮脱手術)は2005年にフランスから導入された新しい手術方法です。 筋肉のたるみを緊張させるというより、子宮なり膀胱、直腸を面として考え、 メッシュ(体にやさしい膜状の布)でこの面を包み込み、外陰部の前方なり後方へ索引するものです。
  • 利点としては膣の狭小化がなく、自然な状態の子宮、膣、直腸に戻ることを期待した手術です。 欠点としては、まれにメッシュが膣に出てきたり、 膀胱の位置が正常に戻るためにかえって尿の出が良くなりすぎる方もおられます。
  • 現在、この方法も行う施設が増えてきていますが、当院でもこの手術を行っており、 現在のところ大きな副障害は起こっていません。
    いずれにしろ御自分に適した治療を医師と相談してお選びいただくことが重要です。

骨盤位妊娠 / 分娩

  • 赤ちゃんは妊娠の中期までは子宮の中で居心地の良い色々な胎位で位置していますが、 妊娠後期になると大半は子宮口に向かって頭を下にして存在し、普通は頭から生まれてまいります。 しかしながら、お産全体の約3〜5%は、骨盤位と言って、お尻や足を下にした胎位をとります。 俗に『逆子(さかご)』と呼ばれます。
  • 骨盤位では、お尻や足から生まれてきて体の中で一番大きな頭が最後に出てくるために、 時に頭が引っ掛かって、身体が宙吊り状態となり、赤ちゃんが酸素不足に陥り危険な状態となります。 以前は、骨盤位の経膣分娩成功の可能性の予知や、 骨盤位娩出術は産婦人科医にとって熟練を要する技術として習得されてまいりました。 しかしながら、その危険性から2001年米国産婦人科学会(ACOG)は『正期産骨盤位分娩では、 経膣分娩を試みることなく予定帝王切開をするべきである』との勧告を出しました。 これを受けて我が国でも経膣分娩が選択可能な例でも帝王切開が行われることが多くなってまいりました。
  • しかしながら、帝王切開分娩は経膣分娩に比べ出血量が多く、静脈血栓症のリスクも高いと言われています。 また開腹手術に伴う合併症も、もちろんあります。 一方で2001年Cochrane Reviewという質の高い医学論文の分析では、 増加の一途をたどる帝王切開の解決策として骨盤位外回転術の有用性がうたわれています。 当院ではこの骨盤位外回転術を取り入れています。 手技は、一定時間骨盤部を高くして用手にて赤ちゃんのお尻を高方に持上げ、 赤ちゃんの頭を下の方に回転させる方法です。
  • 現在当院での成功率は約70%です。 なお、この手技の合併症も充分理解されたうえで、この外回転術を受けて頂かなければなりません。 赤ちゃんを回転させるために、臍の緒が、引っ張られたり、 また、胎盤の圧迫により赤ちゃんの心音が下がったりすること、 子宮を圧迫するので陣痛が始まったり、破水したりすることがあります。 このような場合、緊急に帝王切開を行わなければならないこともあります。 現在当院ではこのような合併症は軽微なものも含めて1%以下です。 骨盤位の妊婦さんで、この外回転術をご希望の妊婦さんは、おかかりの先生に紹介状を書いて頂き、ご来院ください。
前ページへ戻る
ページのトップへ戻る